グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略

あなたの上司は、人生のロールモデルにならない。身につけた経験や能力も、いつまでも価値があるとは限らない。10年後に会社が安泰なのかどうかすら、わからないのだ。日本におけるビジネス環境は、日々猛スピードで変化しているのだから。

著者は「ゆでガエル」の話を引用し、警鐘を鳴らす。カエルはいきなり熱湯に入れられると熱さで飛び出すが、水の中に入れて、徐々に温度を上げていくと、逃げることなくゆで上がってしまうという。

くわばら、くわばら。しかし、ご心配なく。今こそ自分自身のキャリアについて考えを深めるべき好機である。積極的に自分の道を選び取ろうではないか。

キャリア構築のためには、「自分のありたい方向性を明確にし、最善の準備をし、チャンスを逃さず掴み取る」ことが必要だ。本書は、そのための方法を具体的に示している。3部構成となっていて、第1部は「分析編」。キャリアとは何か、自分にとっての仕事の位置づけは何か、ということを探る。次に「戦略立案編」。分析編で見極めた自分の希望に基づいて、キャリアを描き、実現方法を考える。最後に「事例編」。4人のキャリアの実例を出し、考えるヒントを与えてくれる。

本書の素晴らしい点は、豊富なワークシートと親切な文章で、考える枠組みを丁寧に示してくれていることであろう。この1冊を使いこめば、自ずと考えが深まり、己のキャリアが見えてくるはずだ。まさに「キャリアマネジメントテキストの決定版」であると言えよう。要約では主に「分析編」について取り上げているが、興味を抱いた方はぜひ本書を手に取って自分のキャリアについて熟考してみることをオススメする。

本書の要点

 
 
  • 要点
    1
     そもそも自分が仕事にどれほど重きを置いているのか、何を大切に思って働いているのか。社会においてどんな役割を果たしたいか、時間をかけたいことは何か。そうした自分自身の価値観が、自分のキャリアをつくる鍵になる。
  • 要点
    2
     自分の現状を冷静に分析する。現在の仕事に達成感はあるか、自分が成長できる可能性があるのか。その上で、自分のなりたい未来を描く。未来のために必要なスキルを磨き、現状と未来とのギャップを埋めるべく行動する。
  • 要点
    3
     未来のために行動し、未来を意識することが、チャンスをつかむ手段である。

要約

 
 

分析編1・キャリアとは何か?

自分自身について「真剣に」考える

自分自身の価値観、未来像などについて、「真剣に」考えることが、自分のキャリアを考えていく上でのスタートになる。

よく使われる「自分探し」や「自己発見」という言葉があるが、これは、どこかに隠された本当の自分を発掘するということではない。今まで自分が経験してきたこと、考えてきたことを納得のいく形で明らかにし、頭の中で整理する作業なのだ。

「自分探し」は若い時にすることだと否定的に捉える人もいるが、そうではない。自分をとりまく環境や状況が変わっていくのに合わせて、そのつど必要な自分探しがあるのだ。

自分がこうありたいという未来をイメージできて初めて、現状と未来のギャップを埋める活動をすることができる。

StudioM1/iStock/Thinkstock
キャリアは、人生そのもの

そもそも、キャリアとは何か。それは、簡単にいうと「仕事だけではなく、自分が社会において人生でどのような役割を果たすのか」ということである。すなわち、自分がどのような人生を歩みたいのかということともいえる。仕事での役割、家族の中での役割など、どういう役割を果たしたいのか、どのように強弱をつけるのか、ということを指す。

これらを考えるときに重視するものは、人それぞれの価値観によって異なるだろう。絶対的な「良いキャリア」というものはなく、「自分らしい人生」を自分で納得して決めるしかないのだ。

【必読ポイント!】分析編2・自分にとっての仕事の位置づけは?

自分の「役割」をバランスよく考える

人生を考えるためには、人生における役割と、それぞれの役割ごとに自分にどんな選択肢があるのか、またその選択肢からどれを選ぶことになる可能性が高いのかをひとつひとつ検討する必要がある。一方で、役割を離れた自由な時間がどの程度あるかということを知っておくことも肝要だ。

一般的に、人が社会にでてから担う可能性のある役割には、大きく分けて次の5つのカテゴリーがある。

①職業人としての役割

②パートナーとしての役割

③息子、あるいは娘としての役割

④父親、あるいは母親としての役割

⑤社会人(職業人としてではない社会との関わり)としての役割

全員がすべての役割を担うことになるとは限らない。また、これらの役割は時間や環境の変化にともなって変わっていくので、そのたびに改めて見直す必要がある。

StudioM1/iStock/Thinkstock
自分が最も大切にしたいことを意識する

どの役割を自分自身が大切にしたい、あるいは大切にすべきと思っているのかを、冷静に整理しながら理解することが重要だ。それらはこの先、あらゆる意思決定をしていく上での判断軸となる。何を一番大切にしたいのか――それはたとえば、「何よりも自己実現としての仕事」になるかもしれないし、「子どもとの時間」になるかもしれないし、役割を持たずにひたすらに自由であることを欲する人もいるかもしれない。

本書で紹介されているいくつものワークシートのうち、一部を紹介しよう。

■ 理想の時間配分

大切にしたいものを念頭において、今この瞬間、あなたの時間をどのように使いたいと思っているのか、理想の時間配分のイメージを考えてみよう。

まず、仕事:プライベート:睡眠の割合。プライベートの時間は、能力開発、社会的活動、趣味、家族の時間、その他、に分けて、これも時間配分を書き出してみよう。

一方で、現状の時間配分も書き出し、理想と現状の時間配分を比べてみよう。そうすれば既出の5つの役割のうち、どの役割にあなたが重きを置いているのか、どうしたいのか、見えてくるだろう。

■ 大切にしたいものを5つ

あなたが人生において大切にしたいものを5つ挙げてみよう。たとえば、「自分の成長」や、「旅行などを通じて世界を知りたい」「できるだけ多くの人とかかわりたい」というような希望が浮かんでくるはずだ。

次に、この中で何か一つを犠牲にしなければならないとき、どれを諦めるかに印をつけてみよう。最後まで諦めないものに挙がったものが、究極的にあなたが大切にしたいもの、それは生きがいなのである。

 

本書で中心的に取り扱うことになる「職業人としての役割」、つまり仕事について掘り下げるためのワークシートも付されている。

■ キャリア・アンカー

あなたにとって、仕事を選択する上で、重要視していることは何だろうか。

キャリア・アンカーという概念を紹介しよう。キャリア・アンカーとは、自分がキャリアを選択する上でどうしても犠牲にしたくない=本当の自己を象徴する動機や価値観のことを指す。たとえば、「専門・職能別コンピタンス」がキャリア・アンカーの人は、自分の才能を発揮し、専門家であることを自覚して満足感を覚え、専門性を高いレベルに伸ばしていける機会を欲する。また、「奉仕・社会貢献コンピタンス」がキャリア・アンカーの人は、自分の才能や有能な分野よりも、世の中を良くしたいという欲求や価値観に基づいてキャリアを選択する。

キャリア・アンカーにはほかにも、「全般管理コンピタンス」「自律・独立」「保障・安定」「起業家的創造性」「奉仕・社会貢献」「純粋な挑戦」「生活様式」の分類がある。あなたにとって仕事を選択する上で、重要視することを3つ選んでみよう。

Anatoliy Babiy/iStock/Thinkstock

分析編3・今の自分にどのくらい満足しているか

仕事・職場に満足しているか

自分自身の価値観や仕事の位置づけについて考えたあとは、現在の自分自身の状況を分析してみよう。

「仕事・職場に関連するシーン」と、「プライベートに関連したシーン」について大きく分けて見てみたい。

本書で紹介されているワークシートのうち、ここでは一部を紹介しよう。

■ 仕事そのものに対する満足度

まず、仕事そのものに対する満足度について考えてみよう。自分の価値観で、重要だと信じていることが達成されると、人は満足を感じる。そういった達成感は、仕事をして得られる満足の要素の一つであるといえるだろう。自分の仕事は、「○○のために、△△する仕事です」と定義してみよう。そこから、あなたは何を感じるだろうか。

■ 環境や状況に対する満足度

現在の会社・組織における環境、状況に対する満足度についても検討してみよう。

組織の中で時間を過ごすにつれて、組織の中でのポジション、職務領域、専門性、周囲からどれくらい頼られるのか、ということは変化していく。たとえば3年前のあなたと比べて、あなたはどのように変化したのか。また、どのような方向に向かうと仕事への満足感は上がるのか。

■ スキルの棚卸し

満足度のことを考えつつ、あなたの現状のスキルの棚卸しもしてみよう。組織内の役割や役職に規定される一般的な能力(ポータブルスキルとも呼ばれる)と、従事している仕事の特性として必要とされる能力と、分けてリストにしてみよう。

時代変化のスピードには目を見張るものがあるので、求められる能力が時代とともにどう変化していきそうかということの理解、年代ごとの最低限のエンプロイアビリティ(雇われうる能力)などと照らし合わせながら、よく考えることが必要になってくる。

そうすれば、これから自分が何を勉強すべきかが、クリアになってくるだろう。

Jacob Wackerhausen/iStock/Thinkstock
プライベートに満足しているか

「仕事こそ人生」という価値観を持つ方ももちろんいるだろう。ただ、仕事中心の生活を送っている方にも、仕事以外の時間があることは間違いない。

いくつかのことについて、考えてみよう。

まず、先に言及した、人生における役割ごとに、あなたは責任を果たしているだろうか。親としての役割、両親との時間など、これらの役割について気がつかないふりをしていると、突然その責任が重くのしかかってくることもある。

仕事以外の、家族、友人たちといった人たちとの関わり方では、自分がどうありたいのかということと、それとのギャップを今一度見直してみよう。

本書で紹介されているワークシートのうち、ここでは一部を紹介しよう。

■ 何に関心があるのか

あなたは現在何に関心があるのか。また、将来のための時間や、自由な時間は取れているだろうか。自己啓発、趣味&遊び、社会的活動など、自分はどんなことに興味があり、今の生活で満たされているのか、書き出してみよう。

もちろん、とても多忙な人が、「仕事以外の生活も充実させたい」と思って仕事量を減らしたところ、結局仕事以外でわくわくできることがなく、その後も忙しく仕事を楽しんでいるという話もある。自分が、本当のところどう思っているのかを確認することが重要だ。

■ 自分について掘り下げる

もう少し自分について考えてみたいという方は、「自分の性格や行動特性における 強み/弱み は何か」「自分の 強み/弱み を仕事にどう活かすか」「今の仕事以外でどのような仕事が向いているか」「最近1年以内に獲得した知識は何か」など、丹念に書き出してみよう。

結局、自分らしいキャリアとは、自分自身の生き方そのもので、何をもって素晴らしいキャリアといえるかも、人によって異なる。

たとえば高いポジションになればなるほど、重い責任を背負い、休日もとりづらくなってくる。それが本当に望ましいことなのかは、人による。一般的に良いとされている価値観、近しい人たちの価値観に惑わされずに、自分自身の価値観、未来像を大事にしよう。

一読のすすめ

 
 

注:自分自身のキャリアは、結局自分自身で考えねばならないことだ。本書は道筋を照らしつつ、自分のキャリアについて見つめ直す機会を与えてくれる。ワークシートに添って、ひとつひとつについて考えていくと、自分の行きたい道が見えてくるのだ。

この要約では「分析編」を取り上げている。本書ではこの後の「戦略立案編」で、いよいよ、何をしたいのか、今のままでよいのか、今後どうすればよいのか、を考えるフェーズに入る。企業の経営戦略を考えるときのフレームワークを使った「戦略立案編」は、さらに強力にあなたのキャリア研究をサポートしてくれるだろう。

ぜひ、まるごと1冊、しっかり活用していただきたい。使いこめば使いこむほどに、あなたのキャリアはクリアになることだろう。

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