人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

「実力もないのに、どうしてあんな奴が評価されるんだ」――仕事をしていると、少なくとも一度や二度くらいはそう疑問に思ったことがあるのではないだろうか。

本書は、累計読者数が数百万人にのぼる伝説のブログ「分裂勘違い君劇場」の著者であるふろむだ氏が、すべての悩める社会人に向けて、運よりも実力よりも大事な「錯覚資産」についてまとめたものである。

著者は、錯覚資産を「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」と定義する。著者が何者かというと、複数の会社を立ち上げた起業家であり、そのうち1社は上場もしたという成功者である。そんな著者は、成功するかどうかのほとんどは才能や努力ではなく運次第で決まると断言する。

そう聞くと、成功をコントロールすることはできないのかとがっかりする人もいるだろう。ところが錯覚資産を意識的に増やしていくことができれば、成功の確率を高めることができるという。まずは何らかの成果を生むために色んなことにチャレンジし続け、地道に錯覚資産を増やそう。やがてパチンコの「確変」状態がやってきて、雪だるま式に錯覚資産が増えていくこととなる。

思考の錯覚を敵に回すか味方につけられるかで、人生は劇的に変わる。その一歩を踏み出すかどうかはあなた次第だ。

 

本書の要点

 
 
  • 要点
    1
     よいポジションにつく人は実力があるのではなく、「実力があると周囲が錯覚する」からだ。成功したいなら、人々が自分に対して持っている都合のいい錯覚である「錯覚資産」を増やすことに力を注ぐべきだ。
  • 要点
    2
     錯覚資産を得やすい仕事に積極的にチャレンジし、「確変」が来たときに全力投球すれば、効率よく錯覚資産を増やすことができる。
  • 要点
    3
     人間の直感は、思い浮かべやすい情報だけを使って判断するという特徴がある。友人・知人に自分のことをアピールしたりSNSのフォロワー数を増やしたりして、自分を思い浮かべてくれる人を増やそう。

要約

 
 

錯覚資産とはなにか

成功と錯覚資産の関係
RomoloTavani/gettyimages

要約の最初に、著者の経歴を紹介しておきたい。

著者は複数の企業を創業しており、そのうち1社を上場させた。有名な本の監訳、翻訳、執筆、海外講演の経験もある。運営しているブログの累計読者数は数百万人にのぼる。いわゆる「成功者」の知り合いが多く、彼らの強みや弱みを深く理解しているという。

そんな著者は、この世の中は実力主義ではないと指摘する。実力がある人ではなく、実力があると周囲に錯覚させることができる人がよいポジションを手に入れられるのだという。ここでいう錯覚とは、「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」のことであり、「錯覚資産」として機能する。複数の思考の錯覚が掛け算されると、錯覚資産の威力は増していく。

錯覚資産を持っている人は有能だと認識され、よりよいポジションや成長のチャンスを与えられる。そしてよい環境の中で本当に実力をつけていき、やがて本当に実力のあった人を追い抜いてしまう。つまり錯覚資産によって手に入れた環境で実力がつき、そこで出した成果がさらなる錯覚資産を生むという構図になっているのだ。

社会生活はハロー効果なしに成立しない

成功するかどうかのほとんどは運次第で決まる――そう言われるとどう感じるだろう。どうしても直感的に理解できないのではないだろうか。実はそれも思考の錯覚の一種だ。人間は、運も実力だという思考の錯覚にとらわれている。そして一度思考の錯覚にとらわれてしまうと、とらわれているという事実になかなか気づくことができない。

思考の錯覚は認知バイアスによって引き起こされる。認知バイアスとは、認知心理学の用語だ。認知バイアスが「ゆがんだレンズ」なら、思考の錯覚はそれによって引き起こされる「見間違い」に該当する。

認知バイアスの一種にハロー効果というものがある。ハロー効果とは、なにか一点優れている人がいたとき、その人がすべてにおいて優れているように見えてしまう錯覚のことをいう。この錯覚による誤った認識や判断は社会的強者に都合がいいものなので、ハロー効果なしに社会生活を成り立たせることはできないといっていい。だが、あなた自身の人生の選択をするときには、判断を誤るわけにはいかない。思考の錯覚を除去し、正しい判断を下せるようになろう。

錯覚資産を持つ人が成功する理由
takasuu/gettyimages

運はコントロールできない。だが、思考の錯覚と運を運用することで、成功の確率を上げることは可能だ。たとえば起業家があるサービスをヒットさせたとしよう。ここでハロー効果が働く。人々はその起業家が全体的に優秀で、次も成功する確率が高いと錯覚する。多くの資金が投資され、人材も集まってくるだろう。メディアも積極的に情報発信してくれるし、期待感が醸成されてユーザも増える。その結果、次のサービスも成功をとげるというわけだ。失敗は成功の母だというが、成功こそ成功の母なのである。誰しも成功の理由を運ではなく実力だと錯覚するからだ。

学生の勝敗は錯覚資産ではなく実力で決まるが、社会人になるとルールが変わる。受験勉強では思考の錯覚によってテストの点数が良くなることはない。一方、社会人の仕事の多くは運によるところも多いため、錯覚資産の多寡で結果が大きく左右される。錯覚資産を持つものの人生は「イージーモードの神ゲー」になるが、錯覚資産を持たざる者の人生は「ハードモードの糞ゲー」になるのだ。

錯覚資産の魔力

やりたいことをやって生きていくには、「信用」が必要である。「信用」とは、「認められた人柄」と「認められた実力」のことだ。この両方がそろっていなければならない。

ここで思い出してほしいのは、成功者の実力と人柄はハロー効果によって底上げされているということだ。つまり、信用のほとんどの部分が錯覚資産でできていると言っても過言ではない。錯覚資産は人の判断を誤らせる“空虚なハリボテ”にすぎないのだ。同様に「ブランド」の多くも錯覚資産だ。

ここで、冒頭で示した著者の経歴を思い出そう。あなたは無意識のうちに、著者が優秀な人物であると信じ、ここまでの内容に説得力を感じているだろう。それこそまさに錯覚の効果である。著者は、自分が成功したのは運が良かったからだと断言する。しかしそう聞いてもなお、著者の言うことはすべて正しいという感覚が抜けないのではないだろうか。錯覚資産の効果は、それが錯覚だとわかっても決して消えない。それが錯覚資産の魔力だ。

【必読ポイント!】錯覚資産を増やす

「確変」のときに全力投球する
Khongtham/gettyimages

成功するためには錯覚資産が必要だ。でも、錯覚資産を手に入れるには成功しなければならない。このジレンマを解決するにはどうすればいいか。一番簡単なのは、確変状態になるまで小さく賭け続けることだ。「確変」とは、パチンコで特定の場所に球が入り、しばらく当たる確率が急上昇することをいう。パチンコで確変状態になったら、その間は全力で球を打ち続けたほうが得である。

錯覚資産を手に入れる際にも同様の手法を用いる。当たる確率が高いときに集中して投資する手法だ。普段は、ハロー効果が得られそうな仕事や役割に広くチャレンジしておこう。運が良ければ成功できる。当たりを出すために何度もサイコロを振るのと同じ原理だ。運良く成功してハロー効果を手に入れたら、そのハロー効果を使ってよりよい環境を手に入れることができる。パチンコの確変と同じように、当たる確率が高くなってきたところで全力投球すればいい。

特にハロー効果を生じさせやすいのは、具体的な数字が作れそうな案件や本の執筆・講演だ。こうした仕事は積極的に引き受けるようにしよう。獲得した小さなハロー効果をテコにすれば、もう少し大きなハロー効果を手に入れることができる。これを繰り返せばいい。

本当の実力を見抜ける人は多くない。実力だと思っているものの多くは思考の錯覚である。だから、自分に才能があるのかと悩んで時間を無駄にするのはやめよう。人生は「当たると当たる確率が上がる運ゲー」だと思って、数を打って錯覚資産を手に入れること、そして確変のときに大きく投資することに集中しよう。運任せにするのではなく、運ゲーであることをわかったうえでシビアに運を運用する気概が必要だ。

思い込みを外して運を運用する

だれしも、未来はおおむね自分が予想する通りになるはずだと思っている。なぜなら人間には、物事をコントロールしたいという強い欲求が備わっているからだ。コントロールできていると感じるとより幸せに、より健康的で活動的になるという研究結果が報告されているほどだ。「優秀な人が成功している」という思い込みもこの心理で説明できる。この心理は、成功した人に対して「自分はその人のことをもともと優秀だと認識していた」と信じたいという欲求から生じているのである。

コントロールできないことは、人間にとって大きな苦痛となりえる。そう考えれば、成功の原因は運ではないという思い込みもまた、この心理で説明できるだろう。なぜなら、成功の原因が運だとすると、成功はコントロールできないことになってしまうからだ。それよりも、成功するかどうかは才能や努力でコントロールできるという幻想に浸っている方が幸せでいられる。しかしそんな幻想は必要ない。先に述べたとおり、運自体をコントロールできなくとも、運の運用はコントロールできるからだ。

錯覚資産を利用する

現状維持に潜む罠を知る

優秀な人は何をやっても優秀、ダメな奴は何をやらせてもダメ。これもまたハロー効果による思考の錯覚である。あるポジションで良いパフォーマンスを出している人がいたら、その人は全体的に優秀だと認識される。逆も然りだ。ある仕事がうまくいっていないというだけで、人は全体的に無能だと認識されてしまう。

ところがこの錯覚はあっさりと覆される可能性もある。転職したりポジションが変わったりした場合だ。企画部で無能扱いされていた人が営業部に異動した途端に頭角をあらわすというのは珍しいことではない。

今の会社でダメな奴ポジションに認定されてしまった人は、環境と役割を変えることでマイナスのハロー効果を除去することを検討してみよう。ここで気をつけておきたいのは、人間は判断が困難なとき、思考を放棄して現状維持を選択してしまいがちだということだ。これも認知バイアスの一種である。思考の錯覚に惑わされず、よりよい結果を求めて粘り強く考え抜こう。

錯覚資産の重要性を認識する
bee32/gettyimages

実力があると成果が上がる。成果が上がると錯覚資産が増える。錯覚資産が増えるとよい環境に身を置くことができ、実力がつく。このループには別のループも重なっている。実力がなくても錯覚資産があれば成果が上がり、その成果でさらに錯覚資産が増えるというループだ。さらにもう1つループがある。環境に恵まれているから成果が出て錯覚資産が増え、さらに環境に恵まれるというループだ。

この3つのループを見てみると、錯覚資産はすべてのループに共通している。その一方で、一般的に重要だと認識されているはずの実力は1つのループの通過点でしかない。つまり、錯覚資産を増やすことに集中してスキルアップをないがしろにすると1つのループが回らなくなるが、スキルアップに集中して錯覚資産を増やすことを怠るとどのループも回らないということだ。

錯覚資産の重要性を認識していないばかりに、錯覚資産がボトルネックになってしまっている人があまりにも多い。錯覚資産を増やすこととスキルアップが車の両輪であることを知っておくべきだ。

自分のことを思い出してもらいやすくする

人間の直感は、思い浮かべやすい情報だけを使って判断するという特徴がある。この特徴を操れば思考の錯覚を起こさせることができる。

たとえばデザイナーとしてやっていこうと考えている人は、積極的に友人・知人と会うようにしてみよう。そうすれば相手にとって自分が「思い浮かべやすい情報」となり、デザイナーを探しているときにあなたに声をかけてくれる確率が高まるというわけだ。

自分を思い出してもらいやすくしておくという点に関しては、内向的な人は多くのチャンスを逃してしまっている可能性がある。ある程度の実力がついたら、スキルアップそのものよりも「スキルアップしやすい環境を手に入れること」に時間を投資するようにしよう。

錯覚資産を雪だるま式に増やすには、ハロー効果に思い浮かびやすさを掛け合わせることが重要である。SNS時代においては、フォロワー数やブログのPV数が強力な錯覚資産を作り出す。フォロワー数が多ければ多いほど、あなたのことを思い浮かべてくれる人も増えるだろう。フォロワー数が増えることで情報が集まり、チャンスをつかみやすくなって実力も伸びるという好循環だ。

錯覚資産を意識的に増やす人間とそうでない人間の間に大きな格差が生まれる時代がやってきた。あなたはどちらの人間になりたいだろうか。

一読のすすめ

 
 

え? 運よりも実力よりも、「勘違いさせる力」で人生が決まるって? 本書のタイトルを目にしたとき、すぐにページをめくりたくなった。ハロー効果という言葉の意味はなんとなく知っていたが、現実の社会や仕事における実用性については考えたことがなかったので、本書の内容は目からうろこだった。あなたも本書を読んで錯覚資産について知れば知るほど、「あれはそういうことだったのか」と色々なことが腑に落ちるはずだ。

実力があるのになぜか評価してもらえない、いつも目立たない役回りばかりしているという方は、ぜひ本書を読んで成功への一歩を踏み出していただきたい。

 
 
 
 
 
 

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